閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断と治療について



睡眠時無呼吸症候群の適切な治療を進めるためには、睡眠時無呼吸症候群であることを確認し、低換気と無呼吸の程度を調べ、無呼吸が閉塞型・中枢型・混合型のどれかを判定し、重症度を正確に調べることが必要不可欠です。

診断法にはいろいろありますが、夜間に睡眠ポリグラフィーを行なうのが基本です。睡眠ポリグラフィーとは、自然に近い睡眠の下に、睡眠の深さ(脳波)、いびき音、口と鼻を流れる息の大小、有無、胸と腹の呼吸運動、動脈の血液に含まれる酸素の量(酸素飽和度)、心電図、その他多数の項目を一晩中連続して記録し、その結果を解析して診断するものです。

睡眠ポリグラフ検査を実施するには、経験のある臨床検査技師、その他の医療スタッフがそろっており、検査機器が完備した検査入院施設が必要となります。日本はこの点では大変遅れており、全国でも数えるほどの施設しかありません。今、私たちはその改善を進める努力を始めています。

治療法にもいろいろありますが、中等度以上の閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、経鼻陽圧換気療法という治療法が世界的に行なわれ、とても良い効果が得られています。これは簡単な人工呼吸器のような機械から出る気流を、マスクを通して鼻の中へ送り、気道の閉塞を防ぐものです。乱暴な方法のように思われますが、実際にはいびきがなくなり、熟睡感が得られ、驚くほど目覚めが快適になるケースが多くみられます。装置も持ち運び可能で、音も静かなものが作られています。
    

肥満がある場合は、減量により明らかに無呼吸が減ります。しかし、減量に一時的に成功しても、長期間維持することは容易ではありません。いつか体重を減らそうと願いつつもそのまま放置し、定期チェックも受けなくなるケースがよくあります。2年、3年と放置すれば、合併する生活習慣病(高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、脳血管障害など)が増悪し、死亡率が高くなります。

アデノイドや扁桃肥大などの外科的に修正できる上気道狭窄は、耳鼻咽喉科的な手術療法を行なう適応があります。ただし、一時改善しても再発することがあるので、半年から1年以上経過を見て効果を確認する必要があります。

また、歯科装具による治療法もあります。これは、下顎をわずかに前方へずらした位置に固定する、総入れ歯を上下あわせたような形をしているマウスピースをくわえる方法です。舌が前方へ引っ張られて気道が開くために効果が現れます。有効率は約60%ですが、手軽な方法なので捨てがたい治療法といえます。